桜雨〜散りゆく想い〜
 やがて予鈴が鳴り、昼休みの終わりを告げた。


 「香ちゃん……授業始まるから――」


 言いながら香の手を取ろうとした僕は、その手に触れた瞬間反射的に手を離した。


 「っ……!」


 香の手は驚く程冷たかった。


 それは体温が低いなんてレベルではなく、まるで――


 「ノンちゃんごめんね、ちょっと気分悪いから早退する――」


 ふらりと体の向きを変えて、香はゆっくりと階段を下りて行く。


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