桜雨〜散りゆく想い〜
 明らかに正常ではなかった。僕は慌てて後を追って香の体を支えるように両手で掴んだ。


 「大丈夫だから――」


 「どこが大丈夫なんだよ!ふらふらしてるじゃないか!」


 「大丈夫……」


 思いの他強い力で、香は僕を引きはがすとフラフラと階下へと消えて行った。


 結局その日香が戻って来る事はなく、帰り際に茜から早退したと聞かされた。


 もしかしたらと寄った桜並木にも姿は無く、僕はそのまま茜の家に帰った。


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