桜雨〜散りゆく想い〜
 「そう――じゃあ教えてあげる。佐倉さんの事気になるんでしょ?ずっと見つめてるの気付かないとでも思った?」


 「あれは……その――ちょっと初恋の女の子に似てたから見てただけだよ……」


 僕は初めて茜に嘘をついた。冗談ではなく嘘――初恋の女の子に似ていたからではなく、『初恋の女の子だった』から……


 「それに僕は茜の事が好――」


 「言わないで!!」


 茜の声に、僕の言葉は紡がれる前に掻き消される。


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