掌編小説集

499.一事不再理をオーバードーズ

会議に急ぐ為なのか

階段をかけ上がる職員を目にした

甦ったのはあの時の光景

廃ビルの非常階段をかけ上がり

追いかけていたのは

信頼を寄せていた人物だ

なのに今はその人を追っている

殺人事件の被疑者として

屋上の扉を開けた先に見えたのは

手すりの向こう側

あの人の表情は見えず

伸ばした手は間に合うはずもなかった

とここでいつも目覚める夢

おぼろげにしか覚えていなくて

聴取に来た監察官は

失態を隠したいのか

私が全てを飲み込み

異動すれば

問題にはしないと言った

先輩や上司を守りたくて

従ってしまった

不満や疑問は投げ掛けられたけど

言えるはずもなくて

無理矢理解決済みにした

数年後

とある記者が遺体で発見された

それは数日前にもめた記者だった

もめただなんていっても

今更あの時のことを持ち出して

蒸し返されて

付きまとわれそうだったので

少々強引に撒いただけにすぎない

しかし先輩達

いや異動したから

元先輩達は

そんな理由では納得しない

特に先輩は

けど突っぱねた

あの時から

先輩とは険悪になってしまったから

いや険悪に振る舞って

監察官の意識を向けさせない為

と言った方が正しいかもしれない

でも

フラッシュバックした光景に

パニックになってしまって

真実を解き明かせるのは

事実を見つけだそうとした者だけ

なんて諭されて

それでもって守られていて

だから

真相に辿り着く為に

解決させられた未解決事件の

捜査に乗り出した
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