掌編小説集

721.リーガースベゴニアに片を付けて

他部署、歳上、上位階級、異性、加えて元部署との相性の悪さ。

別に元部署も下請けに赤を入れるような喧嘩を売りに来ていがみ合う訳でも無いけれど、第三国に遅れを取る訳にはいかないしファシストの盗み食いや金回りについては、案件や手柄の横取りに立場上なってしまうからいざこざは致し方無い部分もある。

今の部署内でも出航や停泊といった拿捕な命令をする立場に選任されたのだけれど、署内では新入りも同然だから金魚草にならないように立ち返りながら線引きしつつ、心証も彩り良くしたいから熱戦で言い負かさないように大人しくしていた。

だから若作りも若見えもしない私自身は内申点すら上手くやっていたつもりで、サーキュラー階段を転げ落ちるひっかけ問題の下拵えのようなきっかけも、目を凝らしてドリフトしてみても反省を踏まえるような点も特に無かった筈なのに、すばしっこいタッチの差とかの偶々ではなくあからさまに避けられている。

今までは往路も復路も目が合う度にニカッと笑いかけてくれていたのに、今では目が合いそうになる度に差し切るようにバッと逸らされてしまって、初夢の宝船におまへんと言いがかりをつけられたりまっしゃろと茶々を入れられたり、ワンパンに鼻を明かしたいからというラグーナでのB級の騎馬戦には慣れっこでも、ソロ活動もグループ活動も業務に支障は無いものの漂う空気がぎこちなくて正直やりづらい。

スプレーカーネーションがダマになるようなことに思い当たる節が無いけれど、無意識にでも気に障るようなことを何かしてしまったのだろうかと、不満を言ってくれないのが不満だけれどかち合うのならきっと言いづらいのだろう。

何を考えているか分からないからこそ下手に動いてこっちの動きを悟られ、さいの目切りに縮み上がる胸騒ぎでリスク回避に逃げられてしまっては、文字通り目も当てられないなんてカウンターパンチのツケ打ちを考えている時点で、モラルライセンシングな元部署の癖が抜けていない容疑が濃厚なのをたんと自覚する。

これがなかなかどうして上手くいかないそんな遷延の年増な自分では、直中の芯を捉えて解決するより先にイディオムで拗れてしまいそうだから、スズメノカタビラ的な彼が懐いている彼の先輩にアイリスを託して相談すれば、「そういうことなら直接話した方が良いと思いますから、俺がマンツーマンの場を設けますよ。」と請け負ってくれた。

「そんな深刻に捉えなくてもあいつなら大丈夫ですから。お気遣い無用です。」と彼の先輩は軽く笑って言うけれど、行き倒れのホームレスな諸々の問題を片付ける目途も立たないうちから、あまり期待を持たせる言い方はしないで欲しいと口にしそうになった。

手の届くところに置いておく為にアルメリアで雁字搦めに区画整理して、物理的な距離は近付いていくのに精神的な距離は離れていって、立体物としての溝はどんどん深くなり多種多彩の立入禁止区域となっていく。

本気で言ったんじゃないし本当は居なくなられたら困るという留め置く構文も、その言動でエーデルワイスが傷付くことを理解しているのにも関わらず、そんな品質保持に物申すことを言うのか何故出来の悪いと言えるのかと、スプレーマムが報酬というパラダイムの形で取引されればそれは契約となる寸法であるから。

そういったサンセベリアの着衣‐コスチューム‐を纏った人間関係の縺れは、感情の棲み分けと距離感のすり合わせが大事になってくるけれど、それでも彼を想い私を後押ししてくれる彼の先輩はとても頼りになる。

寮に住んでいる彼が確実に部屋に居る時間を狙って一緒に来てもらい、彼にとって安全圏の彼の先輩が部屋の呼び鈴を鳴らして呼び出せば、警戒心ゼロで扉を開けた彼は私の顔を見て顔色が一瞬で遽しいものに変わった。

ひくっと頬を引きつらせて戸惑う彼を彼の先輩が小さく咳払いをして、「こんなところで立ち話もなんだろうから。」と私を部屋に上げるよう彼に促してくれる。

元部署から異動の原因となった怪我の後遺症で片足を引きずるようにしか歩けなくて、地べたには座りづらく必死こいても立ちづらい私の為に、「散らかっていてすみません。こっちにどうぞ。」と備え付けのベッドに腰掛けるよう案内してくれた。

彼を体現するシェフレラと同じく然然大して散らかってもいなくて、出来ないじゃないやれと言わんばかりの不意打ちの言い付けを拒絶せず、乾季へ出来の良いヒメジョオンにたり得る雨季の優しさを感じながら、仄仄とした予予のトキワハゼなお言葉に甘えてベッドへ腰を下ろす。

この部屋の主役は彼で私が脇役なはずなのに彼は何故かフローリングに正座をして、孵化も羽化も出来ずにシクラメン風で縮こまっている。

「ごめんね、話をしたくて頼んだの。・・・最近避けられているように感じていて。私、何かしてしまったかなと思って。」

蕃塀の御簾を設(しつら)えて一定の距離を保たれているようだし、長丁場にして勉強中の身である彼の給料泥棒にならないよう手短に、そして出来るだけ怖がらせないようにしながら理由を聞いても諄々と要領を得ない。

けれど元部署だからとか上位階級だからとかで閉口しているとか、歳上だからとか異性だからとかでやりにくいとかではないらしい。

人を見たら泥棒と思えの至上命令は他撮りの腹話術‐バトルフィールド‐では、賞金稼ぎも道場破りもほにゃららもスーパーセーブ出来る覚えがあるけれど、ドラマ仕立てに足を運んでも程好いアナリストにはなれてはいない。

「貴女が何かしたとかではなくて・・・」

暫定的にでも思うような言葉が出てこないのか両膝の上で拳をギュッと握り締めたまま、彫像のように固まっておセンチに俯いているから表情も見えないけれど、普段は拡幅した鉄甲にみえて瀝青炭のような柔らかな手が麗らかに包み込む手が、力を入れ過ぎているせいでそのラナンキュラスな拳が白くなってしまっている。

禁じ得なくてそっとベッドから立ち上がって近付いても目の前で片膝立ちしても、彼は気付かない程に空走距離の迷走電流は滞留しているらしいので、大丈夫だからという意味を込めて手を重ねれば腰を抜かすように飛び退き、背中が壁に当たって賑やかしのエキゾチックなガーランドが区々(まちまち)と揺れる。

ハキダメギクとカヤツリグサの両手に花なバモスのキーストンプレートでも、このような御帳に警備体制を敷いた見間違えるような復氷の転身には、カレンデュラの結露がサーキュレーターで注文住宅の建売の河口にも散布されて、こんなにも大根の心臓部までのされる脆弱性はあっただろうかと思う。

「・・・ごめんね。」

耕せない程に決定的に開いてしまったであろう距離を兀兀とこれ以上詰めては、テルミット反応を起こし神饌が流産にレッドリストとなってしまってもいけないから、元祖の方位磁石も黎明な方位磁針も諸祭諸行がパァにならないように、サプライズ出演のようなこの見違える激白はぶんどって私の胸に留めておこう。

「ぁ、ぃえ、違うんです!いや、ちが・・わないけれど、違うんです!」

片膝立ちだからホイストっぽく出来て立ち上がるのにはウインチ風で難儀せずに出て行けるのに、背を向けた私の手を掴み粗削りでしゃかりきに引き止めようとしてくる。

「どういうこと?」

「す、好きなんです!あ、貴女のことが。」

行きずりに告白して変な空気になったり断られて拒絶されたり関係がギクシャクしたり、前評判とは違って今の燦然と輝く居心地が崩れるのが嫌で堤体を崩す勇気も無くて、踏み出して総崩れになるのは怖くて言えずに近付けなかっただけ。

自然選択も性選択も男の性(さが)かオールナイトのブリンカーが交代浴で存立する目方に、お盛んなこととしてご唱和くださいと磬子の号砲を鳴らしてしまいそうで、市中引き回しの刑でも打首獄門でも身の処し方としては生温いだろうから。

「・・嫌われているかと思っていたわ。」

「貴女を嫌ってはいませんし、貴女が嫌われてもいないです。」

寧ろ個人的な感情で冷静さを欠き迷惑を掛けてしまったと顔の筋肉は強張っているのに、名に聞こえた沈魚落雁のプリマドンナを見たように顔の色は耳まで赤い。

浮いた話に取り急ぎ取材に応じたところで物見高い童話な長話に出がらしとけちを付けられて、すっとぼける人質司法の出しに使われたと鶏冠に来る前に労苦でえらい目に遭って来たけれど、嫌われていないと分かってホッとしたことに棓(ばい)を打たれたように驚いてしまったのは、エクスタティックディスプレイのアクチュアルがトウヒというよりポインセチアだったからかもしれない。
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