掌編小説集

731.ミューレンベルギア

部署の慰労会に参加して遅くなるから彼のところには行かないと言っていたから、私が尋ねて来たことに彼は驚きながらも家に招き入れてくれた。

どうしたの?今日は遅くなるから来ないって言っていたじゃない、と言う彼の首に腕を絡めてバードキス風にしてみれば、彼には不意打ちだったのか想定外だったのか押し倒す形になってしまった。

けれども構わずに迫ってみれば私の予想外の行動に彼は狼狽えて待ってと言うから、しないの?と言っても酔っているでしょと言って寝かせようとする。

酔っているけれどもしたいのには変わりはないと言いつつ、彼はあの人とは違うなと思っていると口に出ていたらしく、俺はあの人じゃない!と彼は大きな声で否定するけれども、そりゃあそうだと私は不思議に思って首をかしげる。

貴方とあの人は違うし私は貴方としたいと言えば彼は深いため息を吐いて、無碍に扱うようなフレンチキスで私の希望に応えてくれた。

目が覚めたらベッドの上で隣の彼はなんだか微妙な顔つきだったから、どうしたの?と言えば昨日のこと酔っていて覚えていないでしょ?と言うから。

酔った自覚はあるけれどもちゃんと覚えているし、前後不覚になって記憶が曖昧とか飛んでいるとかもない。

雰囲気に流されたとか誰でもいいとか、貴方とあの人と間違うとかないし代わりでもない。

困っている時は困っていなくても何かあれば自分を頼って欲しいと言ったのは貴方の方。

貴方としたくなったから他でもない貴方の顔が浮かんで貴方を頼っただけ。
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