居 候 天 使
「警察きても、俺達姿消しちゃうから。
ということは、通報して一番困るのは誰でしょう?」
憎たらしい言葉を吐きながら、シキの身体はどんどん色素が薄くなっていって、最後には完全に消えて見えなくなった。
「そう、それはエン、あなたです」
なのに、声は、声だけはちゃんとそこから聴こえてくる。
ただ姿が見えないだけで、存在自体はそこにあるのか…
要は透明人間みたいなものだ。
「姿を消したり、ある特定の人だけに見えるようにしたり、天使ってなんでもできるんだぜ。声だって届けたい人にだけ届けることだってできる」
「やりたい放題じゃねーか」
感覚が麻痺してきているのか、何も聞いても大して驚きもしない。
というか、もう本当に疲れた。
1週間分くらいの体力を一気に使い果たした気分だ。
それだけの労力を使い果たして分かったことは、たった一つだ。
こいつらを追い出すことは不可能だということ。
シキが言ったように、姿を消されちゃ警察も呼べない。
そんなことしても、ただのイカれた奴で片付けられるだけだ。
それにこいつら、ただぐーたらしてるだけで、そこまで大きな害はなさそうだ。
「もう、いいよ。勝手にしろよ」
諦めた。
だって、どうにもできないし。
姿消せるし、空飛べるし、法律適用できないし。
「じゃあこれから3ヶ月よろしくな、エン」
「よろしくって、俺は別に…って、はぁ!?3ヶ月!?」
「そういう決まりだから」
スパッと切れ味のいい刀で斬るようにそう言い放つコハク。
「そういう決まりって、一体誰がそんな――」
「神様」
「あぁ神様、神様ね、ハイハイ…」
ちくしょー神様のヤロー、こんな面倒事俺に押し付けやがって。

