優しい君に恋をして【完】
弾き終わると、先生は楽譜に花丸をつけてくれた。
「すごく良くなってるわね。
いっぱい練習したの?
それとも、優くんがいるから?」
先生は、優にもわかるように、少し手話をつけながら、
話していた。
先生も少し手話できるんだ......
「全然練習してなかった。
なんか、お母さんに優とのことを反対されて......
ピアノの練習する気にもなれなかった」
「えっ?お付き合いを、反対されているの?」
先生は壁際の優に向かってそう聞くと、
優は小さく頷いた。
「どうして?」
「なんでかわかんない。もう、ほんとムカつく!
優は一生懸命、お母さんに許してもらおうとしているのに、
お母さん、会おうともしなくて」
「そうだったの。お父さんは?」
「お父さん?
私のお父さん、出張......しゅっちょうって手話どうやるの?」
優に指文字と口を読んでもらってそう聞くと、
優は「出張」と言って手話を教えてくれた。
「私のお父さん、出張ばっかりで、
もう半年以上帰ってきてないから、よくわかんない。
帰ってきても、すぐにまたどっか行っちゃうから」
「そう......」
「どうして、許してくれないんだろう。
優は、こんなに良い人なのに。
どうしてなんだろう」
先生は私の言葉に何度も頷いてくれた。
「もしかしたら、あすかちゃんのお母さんの中で、
何かがあるのかもしれない。
お母さんに反対されるのは、辛いよね......
とにかくもう一度ちゃんと話し合う機会を作らなくちゃ。
話せば、わかってもらえるはず。
優くんは、本当に、
本当に、自慢の弟くんだから」