別れの理由

――お?今日はあの日からちょうど一年やな?

俺は、今までつき合った女達が、
必ずその日を《記念日》として、
なんだかんだと要求してくることにウンザリしながらも、
習慣からか、日付を記憶する癖ができていた。

しかし、俺は楽しみだった。
その日が楽しみというわけではなく、

彼女は、どういうアクションをしてくるんだろう。
そして、
自分はどうリアクションをとればいいか…なんて、考えていると、
独りでに心が踊っている。

自分らしくない自分。
俺はそれぐらい、彼女のことで頭がいっぱいだった。


――おっ来たな。


しばらくすると、案の定、彼女からのライン。
俺は、間髪入れずにそれに目を通す。

【おはよ。今日、店、臨時休業にするから】

――おいおい、休みにまでせんでも……、俺仕事やぞ?

想像以上に愛想のないラインに、
そうきたか!と思いながらも、俺は、

【なんでや?】

と、全く気づいていない自分を選択した。

だいたい、返ってくる言葉は想像できる。
それが、普通の女だから。
女は、みんなその程度だから。

それなのに。

【急用で、今日田舎に帰る】

――はっ?

【なんかあったんか?】

【ううん…友達のところにちょっと】

【わかった。気つけてな】


――はあ?友達?記念日はどないなってんねん?

俺は、
彼女の、そこらへんのつまらない女達と、
比べ者にならないほどの余裕が、たまらなく好きだった。

だって、
その時の俺は、
ただただ、彼女を愛していたから。



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