別れの理由
俺はその夜、
裕次と、成一郎に呼び出された。
彼女とも何度となく来た、カフェの近くの居酒屋。
平日で、あまり客もいないカウンターで、
薄汚いニッカポッカの二人と、
小綺麗なスーツに身を纏ったキザなオヤジが、並んでいた。
「し…しかし拳斗。お前が、あいつの男だなんてなあ~」
成一郎が、普段のキザな顔からは想像もつかない情けない顔で、俺にそう話かけた。
「仕方ないっすやん。あいつがそれでええって言うんっすから…」
俺は、少し優越感に浸りながら生ビールを喉に流し込む。
「ったく、こいつのこの小生意気な顔見てたら無性に腹が立って仕方ねえ!」
そう言って、上司でもある裕次は、
俺をド突くふりして手羽先にかぶりついた。
しばらくの間、俺は二人から、
彼女が大学生の頃の話を聞かされた。
彼女がどれだけ男子学生から人気があったのかや、
女子の中でも、誰からも信頼を受けていたことなどを聞かされて、
気分は乗りに乗っていた。
その彼女が、今は俺のもの……。
俺は、この二人が知らない彼女を知っている。