別れの理由
「なんで、いつもそんな哀しい目なん?」
彼女と出会って三ヵ月たったあの日の夕方、ついに俺はそう訊いた。
彼女が見てるオレンジ色に染まる空を、
目の前のソーサーが並ぶ、サイドボードのガラスを通して見つめながら。
オレンジ色の空は、遠くのビルの黄色い小さな数々の灯りだけを残し、
彼女の黒髪と一体化した周りの風景の輪郭を優しく描いている。
そのオレンジ色に輪郭づけられた彼女は、
振り向いて優しく微笑んだ。
「そう見える?」
「うん」
「拳斗くんだけよ?そんなこと言うの」
彼女はいつも笑っているから。
「でも、そう見える」
俺にはわかるから。
「そっか……。じゃ、拳斗くんと同じ目をしてるってことじゃない?」
彼女の目にも、
俺の心が、ちゃんとそのまま映し出されていた。