別れの理由
彼女はいつも微笑んでいた。
俺の話を聞きながら、その美しい眼差しで俺を見つめる。
それでも、
今までの女みたいに、媚びるような仕草をしない。
飢えたような顔をして、
〈拳斗って呼んでいい?〉
なんて、言わない。
俺の特別な女になりたいモードを発しない。
彼女を静かに追いかける俺の眼差しと、
彼女の瞳が、ぶつかり合うこともなく。
――やっぱオトナやな……。
彼女は、いつも俺の話を笑顔で聞くだけで。
俺は、もっと彼女のことを知りたいのに。
でも、聞かないほうがいい。
それだけはわかっていて。
聞かないほうがいい。
なぜか、
俺はそう思っていた。
だって、
彼女は、哀しい目をしているから。
とても、哀しい目をしているから。
笑っているけど、
彼女の心はきっと泣いている。
俺と同じだ――