別れの理由

俺は、
自分らしくないその言葉に、
少し恥ずかしさを覚えていた。

追いかけられて当たり前だったから。

俺には、
人には言えない過去があるから。


消し去りたい過去。
自分の中に封印してある過去。

そのために、
自分から女を追いかけることはしなかった。

上辺だけの付き合い。
決して心を動かさない付き合い。

そこに魅力を感じる、
後で必ず消し去りたくなる今を生きている女達は、
そんな俺を追いかけてくる。

同じような服を着て、
同じ化粧をして、
同じ髪型と、
同じ香りを放ちながら。

〈拳斗のその目がたまらなく好き……〉

そして、一ヶ月もたつと、

〈拳斗ってさ、ほんとにアタシのこと愛してくれてるの?〉


………。


だから……、
俺は一度も『愛してる』なんて言ってない。


女なんて、

そう、女なんてみんな同じだったから。



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