体育館12:25~私のみる景色~
「それ、出して」
そんな些細な私の行動を、佐伯先輩は見逃さなかったみたい。
私がぎゅっと握りしめたスカートの一部分を指さしてから、先輩はまっすぐに私の目を覗き込んだ。
「こ、これはなんでもないんです、本当にっ」
嫌がらせされるような女の子だなんて、佐伯先輩には思われたくないっ。
というより、佐伯先輩との距離が近すぎてやばい!
周りからはひそひそと話す声が聞こえてくるし、これがサエさんの耳に入ったらこんな紙切れ1枚じゃ済まなくなるかもしれない。
サエさん、キレイでいい人そうだったから、こんなことするなんて今も信じられないけど。
必死で何でもないと言い続ける私に、佐伯先輩は顔をしかめた。
「……藤村関係ないんだったら、もしかしてそれって本当にラブレターなわけ?」
佐伯先輩の口からありえない言葉が聞こえて、「うぇえっ!?」なんて間抜けな声が口から飛び出した。
佐伯先輩、慶ちゃん先輩との会話聞いてたってことだよね?
なんかもうこれは、下手にごまかすよりもいっそのこと『ラブレターです』って言った方がうまく言い逃れできる気がしてきた。