身代わり姫君の異世界恋綺譚
真白は目が覚めるとハッと身を起こした。

キョロキョロと部屋の中を見渡す。

「紫鬼?」

隣で眠っていた紫鬼はいなかった。

素肌に布団を感じてドキッとして身体に目線を移す。

「きゃっ!」

あられもない姿。

部屋の隅には着物が丁寧とは言いがたい畳み方で置かれていた。

身体の怪我は癒された。

動くと身体の芯に違う痛みを感じる。

障子の向こうが明るいことから早朝ではないことがわかる。

「清雅が来なくて良かった……」

真白は急いで新しい着物を身につけた。

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