身代わり姫君の異世界恋綺譚
逃げるようにして自分の部屋に戻った真白は身体のだるさに畳みの上に崩折れるようにして座った。

――別邸から陰陽寮に来るまでに穢れを受けちゃったのかな……身体が重い。

息苦しさと胸の痛み。

――この胸の痛みは……穢れのせいじゃない。

牛車に揺られながらずっと紫鬼のことを考えていた。

――紫鬼の傍にいれば離れられなくなる……。


「真白」

静かな紫鬼の声がして、真白はビクッと身体を震わせ振り向いた。

紫鬼は入り口に立っていた。

先ほどまでうるさいくらい虫が鳴いていたが、今はシーンと静まりかえっている。

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