身代わり姫君の異世界恋綺譚
「紫……鬼……」

紫鬼の紅い目に見つめられ、身体が動かなくなる。

紫鬼はゆっくりと真白に近づき、そして真白の前で屈む。

「……すまない。一緒にいなかったせいでお前は穢れを受けている」

そう言う紫鬼の表情が歪んだ。

「紫鬼のせいじゃないよ……」

この世界へ来た自分の体質のせいだ。

「いや、私が側にいれば受けることも無かっただろう」

「……紫鬼は……私の為に牛車に乗らなかったんだから……」

自分と紫鬼だけならばきまずい雰囲気も我慢できたが、牛車には清雅がいる。

清雅に後ろめたさを感じている真白に、紫鬼は気を使ってくれたのだ。

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