身代わり姫君の異世界恋綺譚
真白が紫鬼の手を引いて花の咲いている草むらへと駆け寄った。

「清雅から聞いた? 別邸にいる時、お花を咲かせることが出来たの」

「ああ。清雅から聞いている」

真白はしおれた花を引き抜いて紫鬼の目の前に見せる。

だが、しおれた花は元の綺麗な花びらにはならない。

「あれ?」

花を持つ手も温かくはならない。

「出来なくなっちゃってる……」

「ここでは色々な気が交じり合っているからな。白笠山とは違うのだろう」

がっかりし肩を落とした真白の頭を優しく撫でる。

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