身代わり姫君の異世界恋綺譚
「紫鬼殿、入るぞ」

清文の声が障子の向こうから聞こえた。

もちろん、清文の後ろに清雅がいることも紫鬼にはお見通しだ。

静かに障子が開くと、紫鬼が真白を床に寝かしつける所だった。

「真白っ!」

清雅が真白の目がうっすら開いているのを見て名前を呼ぶ。

「せ……」

もう言葉を発することも出来なくなっていた。

「紫鬼っ! 真白の様子がおかしいぞ! 治せないのかっ!?」

――清雅……そんなこと言わないで……。あぁ……もう……ダメだよ。紫鬼……あい……し……て……る。

真白の意識はそこで途切れた。

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