身代わり姫君の異世界恋綺譚
真白の心の声は紫鬼には痛いほど届いていた。

――真白、私も愛しているぞ。

目を閉じる真白を見つめ優しく頬を撫でる。

清雅はそんな紫鬼を見て驚いていた。

――紫鬼のあのような眼差しは初めて見るぞ。優しい目じゃが……悲しそうな眼差し……何かがおかしい……。

「……清雅、もう真白はいなくなる」

紫鬼は振り向くと清雅に告げた。

「真白が……いなくなる?」

「あとわずかで清蘭にとり込まれてしまうのだ」

「そんな!」

真白の身体を清蘭が乗っ取っても所詮物の怪は物の怪。

人間になどなれやしない。


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