我等オカ研特捜部
 事件の次の日は日曜日だった。

 その日の事を誰かに話した所で誰にも信じて貰えないと思った私は親友の真奈美にも家族にさえも言わず、家から梅酒の大瓶を持ち出し自転車で西大路駅まで駆けた。
 
 もう二人は待ちきれない様子で私を呼んだ。

谷口
「おせーよ!」

 目を真っ赤にした眠っていないであろう谷口は風呂敷を抱えていた。

荒木
「新人が遅れるとはね、そういうの社会にでても引きずるよ?」
 
 同じく目を真っ赤ににしたゼロが釜を背負っていた。

小山
「あはは!二人とも気に入られようと必死やん!

 何その大きなお土産?」
 
谷口
「お前目ー赤いぞ?」
 
 私の自転車に荷物を積み自転車を押しながら私達は神社に向かった。
 
 正直楽しみでしょうがなかった。
 
 こんなに面白い事があるなんて想像した事はあったが二人程ではなかった。

谷口
「まさか鬼社とはなー」

小山
「おにやしろ?」

荒木
「アヤメさんも言ってたろ?
 
 神様がいるやしろで、かみやしろだろ?

 じんじゃって言うけど」

谷口
「鬼がいるから、おにやしろさ」
 
小山
「楽しそうね?

 気が変わって食べられるかもよ?」

谷口
「だからお土産凝ったんだよ」

荒木
「二人とも綺麗系じゃん、こんなの夢みたいだ」

谷口
「もう食われてもいいや、オカルトやっててよかったー」
 
 能天気な二人と一緒にいて私も不安は感じなかった。
 
 鬼は二人とも外の世界に興味津々だったから、当分食べられないと感じていた。
 
 私達は壁を越え境内に入ると、そこにはタタミちゃんが笑顔で待っており、私の手を引いて社正面に引いていった。
 
 アヤメさんも溢れんばかりの笑顔で待っていた。

谷口
「じゃあまず俺からな!」
 
 谷口は風呂敷を二人に渡し、アヤメさんに耳打ちした。
 
 鬼に耳打ちをする谷口はアホなのか勇敢なのか分からなかったがアヤメさんの顔色が一瞬で変わったのが分かった。

アヤメ
「おいでタタミ!」
 
 二人は社に入り、中からは笑い声が聞こえた。

小山
「何渡したの?」

谷口
「秘密ー」
 
 社の扉が開かれると巫女の衣装を着た二人が笑いながら出てきた。
 
 タタミは出てくるなり谷口に飛び付いた。

荒木
「さすがは隊長、心得すぎている」
 
 荒木は顔を紅潮させていた。

小山
「可愛いー」
 
 私も思わず谷口からタタミちゃんを引き剥がし抱き締めた。

アヤメ
「ええベベありがとうな、蟹の兄ちゃん」

谷口
「泡吹いたから蟹ってこと?」

タタミ
「これ、ええ匂い、おおきに」

谷口
「うち神社やってまして、盗んできました!」

小山
「それはええけど、何でサイズぴったりなん?」

谷口
「エースのも持ってこーか?」
 
 ジロジロ見てくる谷口の視線に私は思わず体を隠し、アヤメは腹を抱えて笑っていた。



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