声
ー助かっ……たー
叶は深く息を吐く。
ー総司って人を見た途端にあの人逃げ出してった?何で?この人達一体何なの?ー
「で、怪我とかない?」
俯いたまま動かない叶を沖田が覗き込む。
「あ……はい。あの、ありがとうございました。」
「無事でよかったね。」
ーもう、何が何だか分かんないよ。私はどうしちゃったの?ー
「君さ、そろそろちゃんと話した方がいいと思うんだよね。」
沖田が溜め息混じりに言う。
「私にも分からないんです………………」
俯いたままの、か細い声。
「総司、斎藤。いつを屯所に連れていけ。話はそれからだ。」
土方はそれだけ言うと踵を返し去っていった。
「はい、はい。じゃ、行こうか。」
沖田は子猫と叶が落とした荷物を持つ。
斎藤が叶の腕を掴むと土方の消えた方向へと歩き出す。
「あのっ!どこに行くんですか!?」
斎藤に半ば引き摺られるかの様に歩かされていた叶は、その腕を振り払い立ち止まる。
「屯所と言った筈だ。大人しくついてくればいい。」
有無を言わさぬ口調で斎藤が答え、再び叶の腕を掴み歩き出した。
混乱していた叶は、これ以上考える事ができず、ただ大人しく沖田と斎藤の後に続いた。