「だから、ねぇ、聞いてる?」

「聞いてるよ。」


千草はダメだと言わんばかりに溜め息をつく。


「叶ちゃんはさ、可愛いんだし、もっと笑えばいいのに!そんで禁煙したらすぐ次が見つかるって。」


……ナゼ禁煙?

少し前に付き合って1年の彼と別れた。

原因は無愛想な表情とタバコ。

叶は笑わない。

人付き合いが悪い訳ではないが、笑顔を見た者はほぼ居ないと言ってもいい。

そして、この禁煙の時代と女という事が彼には許せなかったらしい。


「別に次は要らないし。無理に笑っても仕方ないじゃない。それにタバコと恋愛を結びつけないでよ。」


「そんな事言ったって笑顔がないのとタバコが原因で別れたんでしょ?」

「まぁね。けど、彼氏居ないとその分お金使わないし、要らないよ。」

「タバコの分、お金貯まるじゃん。」


……痛いとこを付くね。

別にどうしてもタバコを止めたくない訳じゃない。

吸い始めたのも少しの好奇心と親への幼稚な反発心からだ。


「とにかく私の事はいいから。それよりちーちゃんの方はどうなの?」


このままだとお昼休み中、禁煙の話になりそうで話題を変える。

千草は最近いい雰囲気の彼の話を夢中でし出した。

こんな繰り返しの毎日。
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