「これ以上待っても無駄だ。始めるぞ。」


苛つきを隠そうともしない声色が広間に響く。

その声にピクリと少しだけ叶の肩が動く。



「ふむ、致し方ないか。さて、そこの娘さん。確か森田叶君だったね。大方の話は聞いたが、君は何故あの様な場に居たのだね?」



ーそれが自分で分かったら苦労しないんだけどなー



俯き、黙ったままの叶。



「てめぇ、だんまりを決め込もうってのか?白状でき……」

「土方君。威嚇しては話せる事も話せなくなりますよ。」



土方の言葉を遮り、優しげな眼鏡の男が口を挟む。



「森田君、きちんと話してはくれませんか?貴女が身の潔白を証明してくれさえすれば私達は貴女をきちんと家まで送り届けますよ。」




ー家…私のアパートはどこに行ったんだろ。ううん、アパートがどっか行ったんじゃなくて、私がどっか行ったんだよね……ー



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