ただ、名前を呼んで

少し弱く呟く祖母の言葉に、僕は何も言い返せなかった。

頷くでもなく、僕はまた歩を進めた。

沈黙が僕らを包む中、僕が足を引きずる音だけがズッズッと響く。


「僕、約束したんだ。」

「……どんな?」


祖父が優しいトーンで聞き返す。僕は足元に眼をやったままで答える。


「明日も行くって。だってお母さんも、そう言った。」

「カスミさんが?」

「うん。また来てねって、言ったんだ。」
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