ただ、名前を呼んで

そこまで話すと、僕はもう限界だった。

ぼたぼたとだらしなく涙が流れて拭いきれない。


祖父は少し顔を上げて、すでに日の沈んだ空を見ていた。

祖母は何も言わなかった。


そして祖父はまるで独り言のように、小さく呟く。


「分かってくれるさ、カスミさんなら。お前の母親なんだから。」


僕はまだ視界のはっきりしない眼で祖父を見た。

遠くを見ているようなその横顔はとても穏やかで。

僕は心の中で何度も『ごめんなさい』を言い、数日間の安静を決心した。
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