ただ、名前を呼んで

母は内藤さんの奥さんと何か会話をしていた。
取り留めのない、親子の会話。

母は記憶がまだ安定しておらず、所々曖昧な部分があるらしい。

表情も少し固く、体調もあまり良くなさそうだ。


内藤さんは二人に近づき、さも自然に会話に加わる。母に「身体は辛くないか?」とかいたわりながら。

そんな部屋の隅で、僕は輪に入れずに居た。

まるでその辺の椅子か何かみたいに、この場に僕は要らないみたいに。

僕は実の息子なのにと、心の中で呟いた。
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