ただ、名前を呼んで
ついには涙を浮かべ、その場にへたりこむ母。
複雑な気持ちだ。
僕が思い描いていた母は、穏やかで優しくて、落ち着いた人だった。
だけど僕が今見ているのは、ひたむきで激しく、感情的な母なのだ。
失望している訳ではないけど、ただ、複雑だった。
「嫌ぁー!!拓郎を待つの!!嫌ぁー!!」
周りをはばからず泣き叫ぶ母。
内藤さんは右手を振り上げ、母の頬をピシャリとはたいた。
「拓郎君は死んだんだ!!」