ただ、名前を呼んで
・目に映るもの
日差しが強くなり、日中は半袖でも良いくらいの気温。
僕は相変わらず毎日、放課後には母の元に通っていた。
特に目立った変化はないけれど、時折目が合うようになってきた。
いつか僕の存在を理解してくれるかな。そんな期待を胸に、今日も母の元に向かう。
僕の横をヒラヒラと紋白蝶が通過した。
可愛らしさに頬が緩む。
僕が立ち止まると、蝶は僕の周りをヒラヒラと一周してから、花を求めて飛び立った。
「僕が花じゃなくて残念だったね。」
僕はそう囁いて、また歩き出す。