夕凪コンチェルト
ごろん、と砂浜へ寝転がる。海の色が「碧」なら、空の色は果てしなく続く澄んだ「青」だ。碧と青の狭間に私はいて、どこへにも行けないでいる。
魚の様に海を自由に泳ぎ回りたい。鳥の様に大空をどこまでも飛んで行けたら……。どんなに気持ちがいいだろう。
そんな想像をしながら目を閉じる。波打ち際に寝転んでいたから、海水が足元を濡らす。
あ、何だか急に眠くなってきた。このまま眠ってしまったら、気がつかないまま満潮を迎えて、海に沈んでしまうのかしら。
――まあ、それならそれでもいいか。
空に抱かれ、海に溶ける。
なんてキレイな響き。死は、本当は優しいものなのかもしれない。
既に夢うつつだった私は、現実逃避とも言える思考に陥っていた。後で冷静なった時、ゾッとする程に。
眠りに落ちそうになった私を現実に戻したのは、そう遠くない場所から響いた、車の派手なクラクションだった。
閉じていた目をハッと見開く。クラクションが警告音の様に、余韻を残して広がっていった。