上司のヒミツと私のウソ
 そのせいで、子供のころから両親はほとんど家にはいなかった。

 日曜日はもちろん、夏休みも、ゴールデンウイークも、私が風邪をひいて学校を休んだ日も、二人のいる場所は「エーデルワイス」だった。

 店が休みの日も、掃除や新しいメニューの考案などで、やっぱり店に入り浸ることが多かった。

 私よりも「エーデルワイス」のほうが大事なのだと、何度おもったことだろう。


 たしか十歳の誕生日だった。


 忙しい両親の代わりに、ミサコちゃんちのおばさんが例年どおりバースデーケーキを用意して、私の帰りを待ってくれているはずだった。

 なのに学校からの帰り道、私の足はなぜか遠回りをして「エーデルワイス」に向かった。


 ガラス窓越しに狭い店の中をのぞき見た。


 赤いチェックのテーブルクロスがかかったテーブル席に、私と同じくらいの年齢の女の子と、その子の父親らしき男の人が座っていた。
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