上司のヒミツと私のウソ
 私は驚いて目を見張った。

「かなうかどうか確証はないが、あんたが望むなら上にかけあってみる。もしくはそれ以外の部署で──」

「それ、どういう意味ですか?」


 どうしてそうなるのかわからない。

 矢神は真面目な顔で私を見つめ返した。そして気の抜けたような声でいった。


「もう俺の顔を見たくないんじゃないかとおもって」

「……」

「いま俺にできるのは、このくらいだから」

「……」

「黙ってないでなんとかいえ」


 やりたいことができない人間のなかに、つい数か月前まで私もいた。あのころにもどりたい? まさか。


「私は企画部を離れるつもりはありません」

 迷いのない声できっぱりと告げた。


「いいのか、本当に」

「はい」

 矢神はまだ疑わしそうな目でこちらを見ている。
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