上司のヒミツと私のウソ
 興奮して声が高くなる荒谷を、ひとまず落ち着かせる。


「西森さんとは付き合っていません。誤解ですよ」

「でも、好きな人がいるんですよね? 松本さんに、そういって断ったんでしょう?」

「まあ、それもありますけど。今は『RED』のことで頭がいっぱいなんで。松本さんにはちゃんと説明しましたし、彼女も納得してくれたはずですが」

「それはそうですけど、でも……」

「荒谷さんは納得がいきませんか」


 荒谷はうつむいて真っ赤になった。


「わ、私は、別に」

「もし松本さんが私を疑っているのなら、わかってもらえるまで何度でも話をします。いつでも呼び出してもらってかまいませんよ。ただし、話をするのは松本さん本人とです」


 きまり悪そうな顔をして、荒谷は押し黙る。


「それでいいですか?」

「……はい」

「あなたは『RED』のメンバーですから、わかってくれるとおもっていました。これからは、他人の心配をする暇などないくらい忙しくなりますよ。がんばってください」


 しおれて小声で返事をする荒谷を残し、先にミーティングルームを出た。
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