最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
「わかったから、顔を上げてよ」
「承知してくれるんですね? ありがとうございます!」
「いいけどさ、もし俺がオッケーしても恨まないでよ?」
えっ? オッケーするの?
さっきは断ろうとしたよね? もう気が変わったんかい!
「う、恨みませんよ」
たぶん。
「じゃ、連絡頂戴」
「あ、待ってください」
立ち上がり掛けた中嶋さんを俺は止めた。大事な引継ぎ事項を中嶋さんに伝えるために。
「まだ何かあるの?」
「はい。これは大事な事なんでよく聞いてください。もし恭子さんと付き合うようになったら、口紅の事は話題にしないでください」
「はあ? なんで?」
なんで?
なんでって……なんでだろう。
「わかりません。それと、恭子さんはエスカレーター派です」
「何それ?」
「つまり、恭子さんは階段が極端に苦手なんです。もしどうしても階段を上る時は、おんぶしてあげてください」
「はあ? なんでよ?」
「わかりません」
「君、付き合ってる割には彼女の事あまり知らないようだね?」
うっ。鋭い指摘だ。言われてみればその通りかもしんない。
「とにかく、今の2つは覚えていてください。お願いします」
「はいよ」
という事で、後は恭子さんと中嶋さんを引き合わせるだけになった。
中嶋さんのキャラは掴みどころがなく、従ってどんな結果になるかは全く予測できない。