最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
はあー
莉那先輩が足早に店を出て行くのを見届けると、思わず俺は大きく溜め息をついてしまった。
「莉那が帰っちゃって残念ね?」
俺はハッとして前を向いた。恭子さんの声を聞いたのは、それが初めてだったから。意外と言っては失礼だが、恭子さんの声は女性らしい普通の声だった。
ただし、言葉自体は皮肉っぽく、剣を含んでいるようだったが。
「はい。あ、いや、料理ですよ? あの人ったら、自分は食べもしないくせにこんなに頼んじゃって、どうするんですかね? 無責任ですよね?」
と俺は取り繕いながら、笑顔を顔に貼り付けた。恭子さんも笑顔を返してくれるといいな、なんて期待したのだが……
何か気に障ったのか、恭子さんはプイッと横を向いてしまった。
莉那先輩、やっばり恭子さんと二人じゃ、間が持たないっす。
と言ってもいられないので……
「恭子さん、ビールお代わりでいいですか? そうですか? すみませーん。生中二つ! さあ、食うぞー。恭子さんもたくさん食べてくださいね? お、このマグロ美味いです。本マグロかもですね!」
などと、俺はがんばったさ。まるで一人芝居みたいで虚しかったけども。