とけていく…
あのピアノは、彼をちゃんと待っていた。綺麗に磨かれたその美しさに、一瞬目を細めながら、鍵穴に受け取ったキーを入れ、左に回す。ガチャリと開く音がすると、キーを譜面台の上に置き、気分を落ち着かせるために、大きな座面の椅子に座った。大きく息を吐き、肩の力を抜く。そして、鍵盤の蓋を開いた。ズラリと並ぶ鍵盤を見ると、不思議と弾きたくなっていた。頭の中で合図をすると、彼の指は走り出していた。