ジレンマ(仮)
カケルは今3年生で、美術部の部長で、生徒会の副会長だったりもする。
頭が良くて、スポーツもできて、背も高くて、どこも取り柄のない平凡な顔の私より綺麗な顔をしている。
それに性格も優しくて、女子はもちろんのこと、男子からも人気があるという噂を聞いたことがある。
昔から、どこの漫画から出てきたのかという程の完璧な王子様だった。
・・・なのに、私にはあんな酷い事を平気でする。
されるがままの私もどうかと思うけど、私には拒絶できない・・・。
静かに教室のドアを開けると、一斉にみんなの視線が私に向けられた。
そして教室を出た時のように、また亮太と目があった。
真っ直ぐな澄んだ目に全て見透かされているようで、心臓が飛び跳ねた。
何事も無かったかの様に目を逸らすと、国語の先生が心配そうに口を開いた。
「川瀬さんお腹は大丈夫なの?」
「あ、はい・・・もう大丈夫です」
どうやら真子ちゃんは、私が腹痛だと先生に伝えといてくれたみたいだ。
自分の席に座ると、前に座っている真子ちゃんの背中をツンツンと小突いた。
それに気付いた真子ちゃんが振り向いてくれた。
「ありかとう。助かったよっ」
先生に聞こえないように小声で真子ちゃんに言うと、真子ちゃんは笑顔を返してくれた。
「いいよ、いいよ。またいつでも言ってね」
「ありがとう」
それだけ聞くと、真子ちゃんはまた前を向き授業に集中していた。