ジレンマ(仮)
放課後。
雨は止むことを知らずに、朝からずっと降り続いている。
私は部活に入っていないから、授業が終わるといつもすぐに帰宅する。
だけど今日は何だかすぐに帰る気分になれず、下駄箱のある玄関から傘を片手に持ったまま、何となくボーッと雨を眺めていた。
何となく、昔のカケルの笑った顔が思い浮かんできた。
懐かしいな・・・。
そういえば、最近私はカケルの前でちゃんと笑ってない気がする。
毎日会っているのに・・・。
どうしたら、昔みたいに戻れるのかな・・・?
もう、戻れないのかな・・・。
「何やってんの?」
突然後ろから声が聞こえた。
驚いて振り向くと、そこには・・・。
「・・・なんだ、亮太か」
「なに、その残念そうな反応・・・カケルだと思った?」
「え?・・・何で?」
ビックリした。
まさかそんな事言われるなんて思ってもいなかったから。
私は何も気付いていない風に平静を装った。
だけどきっと、亮太には何かしら気付かれている気がする。
亮太は昔から感がいいというか・・・鋭いというか・・・。
「別に?・・・何となく」
「・・・そう?」
「そう」
「・・・」
「・・・」
少しの間、沈黙が流れた。