202号室の、お兄さん☆【完】


「悪いと思ったのですが、貴女の事は全て調べましたのよ。調べたからこそ、貴女の入居を許可したわ」

「そ……そうなんですか。ありがとうございます」

「駄目ね、私(わたくし)。緊張して、出来が美しくないわ」

花を見渡しながら、管理人さんは溜め息を吐いた。
そして、テーブルに置くと不満げに首を傾げた。


「何から話したらよろしいかしら……?
鳴海さんの事は、他言するのは初めてなのよ」

「あっ……」

そう言った後、管理人さんは花を1つ持ち上げると、茎を切り始めた。




「飾る為に摘まれたのが、真絢さんだとしたら、

鳴海さんは、詰まれないように隠されたお花」

切った花をまた花瓶に戻すと、まだ納得できなさそうではあるが、微かに頷いた。


そして、漸く私を見た。

慈愛が感じられる、包み込むような優しい瞳で。








「真絢さんと鳴海さんは、本当の姉弟ですのよ」






くしゃくしゃと、切った茎を新聞紙ごと折りたたんでいく。






「長い長い昔話は、あの歪んだ愛情が始まりなの」



そう言うが、私の頭は追いつかない。

全身が痺れて、重くて、フワフワして、金縛りにあって。

私の体が私のものではないみたいだった。





「ど、して……私なんかに」

教えてくださるんですか――…?



そう全て言う前に、震えて声は音にならなかった。
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