202号室の、お兄さん☆【完】
「賭け、……かしら」
「へ?」
「大博打は好きではないのですが、私の直感を信じてみようかと」
フフっと笑って仰るが、益々分かりません。
「鳴海さん、貴女の事を『みかどちゃん』と『ちゃん付け』なんですってね」
「あ、はい……」
「鳴海さん、弟の様に可愛がってる理人さん達でも『さん』付けで、どこか距離を置いてらしたのよ?
なのに、貴女を『みかどちゃん』と呼ぶとお聞きしたら、何故か……」
目を伏せる管理人さんは、儚げに寂しげに、昔を懐かしむ様に微笑む。
「可能性を信じてみようって思ってしまったの」
「か、管理人さん……」
「ふふ。麗子って気軽に呼んで下さいな。花忘荘のあの子たちは、『ばぁちゃん』って呼ぶから、ドッと老けちゃうのよね」
「と、とんでもないです!! 麗子さんは綺麗でお美しいですよ!! 年齢なんて感じられないです」
そうです!
花忘荘の管理人さんは、
千景ちゃんと同様に、内面から出る美しさと、慈愛に満ちた微笑みを携えた、マリア様のような女性でした。