202号室の、お兄さん☆【完】

「なぁ、表にいる奴、怪しくね?」

部活帰りの皇汰が、私の部屋に入って来るなり、そう言った。
ドアのスコープから覗こうとするが、全然分からなかった。

「ほら、見て見て」

皇汰は堂々とドアを開けて、下を指差した。
隣の高級マンションと花忘荘の間の道に、新聞を読んでいる人が見えた。

黄土色の帽子を深く被り、同じ色のコートを着ているが、ここからでは男か女かさえ分からない。

空は太陽が隠れ始めていた。
千景さんは出かけて居ないし、お兄さんも土日は定休日だと言っていたから、出かけてるのか部屋から物音一つしない。

そして、私はまだ他の部屋の人には挨拶さえできていない程、会えていなかった。



「でも、新聞に夢中になってるだけかもしれないし」
「こんな薄暗いのに?」
「私も勉強してて気づいたら、真っ暗だった事あるよ」
「新聞紙に、2つ穴が開いてても? わざわざ目が見える位置に穴が開いてるんだぜ?」


そして、更に驚く事を言った。
「さっきから、202号室の窓を見たり、戻ったり、うろうろしてるんだよ」

「えっ」

202号室を!?

「つまり、間違いなく」

皇汰の目が光り、私は息を飲む。



「下着泥棒、だ」
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