好きだったよ、ずっと。【完】
「ほ、んとに…?キライに、なってない…?」



「あぁ、なってない。朱里、好きだよ」



抱きしめてた腕をほどくと、鼻先が触れ合う距離まで顔が近付き小さく触れるだけのキスをされた。



何度も何度も、角度を変えチュッとリップ音だけが響く。



「ヤベ、これじゃぁまたしたくなるから。おしまいな」



春夜がスッと離れ、寂しい気持ちが溢れ出す。



「そんな目で見んな。朱里、もしかして機嫌直った?」



春夜の言葉に、コクリと頷けば。



「マジか…。どうしようか。でも、もう持ってきたしな…」



一人ブツブツと何かを言ってて。



「春夜…?」



わたしが声を掛ければ、「あぁ、ごめん」と姿勢を正した。



春夜の姿に、なぜか自分も姿勢を正さなければとスッと背筋を伸ばす。



「あ、のさ…。本当は、もっと夜景の見えるホテルで、言うつもりだったんだけど…」



「うん?」



夜景の見えるホテル?言うつもり?なにを?



「こんな恰好で、ごめんな?でも俺、お前に嫌われたくないからさ」



嫌われたくないって、そんなのわたしが嫌われたくないのに…。
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