sweet wolf
それでも、奴は顔色一つ変えない。
あたしを見て、さらにあきれた笑いを浮かべる。
その下品なメッシュの髪を引き抜いてやりたい。
だが、奴の口から出た言葉に、あたしは思わず力を緩めてしまった。
「俺が狼だと周りは知らねぇ。
教室では目立った行動取れねぇよ」
「元から目立ってるよ!
その下品な格好」
「あぁ!?喧嘩売ってんのか?」
火花を散らすあたしたち。
殴り合いの喧嘩が勃発してもおかしくない事態。
こんなあたしたちを止めるのは、
「やめなよ、二人とも!!」
不良にも動じず、顔を真っ赤にして叫ぶ直樹だった。
こいつ、ただの臆病生真面目野郎だと思っていたのに、意外と肝の据わった奴かもしれない。