sweet wolf
その低い敵意に満ちた声を聞いた時、あたしは妄想の世界から帰ってきた。
気付いたらあたしの前には背の高い男がいた。
ブリーチで痛んだ金髪から覗く耳には、重そうなピアスがずらりと並ぶ。
黒いTシャツに、ボロボロの制服のズボン。
ローファーのかかとを踏んで引きずっていた。
眉毛は殆どなく、目は獣のように鋭い。
あたしを値踏みするように見下ろし、意地悪そうに口角を上げた。
怖い……。
その一言だった。
蓮なんかとは次元が違う。
奴には優しさの欠片も見えない。
街にたむろしていた薬物常習者と同じようなニオイがした。