sweet wolf





「杏」




あたしを呼ぶ蓮の声が聞こえる。

その瞬間、ビクッと飛び上がるあたし。




続いて聞こえる足音。

重くて静かなその足取り。

捕まったらあたし……また、蓮に溺れてしまう。






もつれる足を必死で動かし逃げようとする。

だけど、




「待て、杏」




その声を聞くたびに、心のどこかで求めてしまう。

強がっているのに、本当のあたしは弱くて愚かだ。





「大宮先輩!?」




女の悲鳴に近い叫び声が聞こえた時、あたしの左手首に温もりを感じる。

その瞬間、身体の力が抜けたようにその場に崩れ落ちていた。


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