sweet wolf
「おはよう、栖本さん」
不意に明るい直樹の声が聞こえた。
何がおはよう、だ。
この非常事態を知っていて、あえてあたしに近付こうとする。
本当に兄弟揃って腹黒い。
あたしは直樹を睨んだ。
「どうしたの?」
そう言ってあたしの席を覗き込んだ直樹は、顔を強張らせた。
本当に演技が上手い。
あたしがこうなっていることを知っていながら、驚いたふりをする。
だって……
だって、あたしがこうなったのも、狼に目をつけられたからでしょ?
春樹があたしにムカついたから、いじめが始まったんでしょ?