☆マリッジ☆リングス☆
一方、聡は、何も知らず、芽衣との逢瀬を繰り返していた。

「ハイ。コレ。」

付き合いも1年を越え、芽衣へのけじめとして

聡も、今年はマリッジリングを贈る。

「うわー。コレ。すごい。」

「20代最後の誕生日に、君は結婚したいのか・・・本当に。」

「う・・・うん。」

若い芽衣にとって、今現在好きな男。

この男と一緒になりたいって感情は変わらなかった。

「私・・・待つよ。あなたのこと。」

「いや・・・僕が待つんだ。」

「妻と離婚することにしたんだ。・・・時間は少しかかると思う。」

「えっ・・・」

芽衣はまさか聡が離婚をするなんて・・・

「嬉しい・・・でも、なんだか複雑だわ。」芽衣はようやく聡の現実を感じていた。

「俺が好きなのは芽衣、おまえだ。だからこうして・・・」

何度も肌を重ねたそのベッドで

2人はまた何度も・・・

この瞬間だけは

現実を忘れられていたから。

ほんの、束の間の癒しから

本物の愛情に変わりゆく、芽衣への想い

20代の芽衣にそれはしっかり伝わっているのか・・・

聡は、ただただ、自分を心から受け止めてくれるこの女が愛おしく

「また、来れる時に来てよ。」芽衣はいつもそう言って送り出してくれるけど

「もう・・・そんなこと言うなよ。」

「寂しい思いをさせてごめん・・・」

それから、毎週末はこうして

芽衣の部屋にも自然に通うようになっていったんだ。



「ただいま・・・・」

誰も返事のない自分の自宅。

聡は、その寒々しい、リビングで

言葉にならない孤独を感じていた。
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