二重人格三重唱
でも翼は戸惑った。
節子と貞夫がお膳立てしてくれた東大の合格祝い。
それをアリバイにしようとしたことを。
勝との思い出の品を汚してしまったことを。
勝が買ってくれたアルミシート。
でも翼はこれ以上の素材を知らない。
翼はもがき苦しみ抜いた。
それでも憎しみがそれを上回った。
翼は結局、使ってしまったのだった。
勝だけではない、陽子と秘密基地で暖まった思い出をたっぷり包んでくれたアルミシートを。
翼は陽子を犯罪者にしたくないと願った。
だけど陽子は一緒に罪を償いたかった。
それなのに……。
翼は居ない。
翔から陽子を守り抜いて死んでいった。
だからこそ、殺人者の汚名を敢えて着ようとしたのだった。
「そう言うのは殺人とは言えないわ」
節子は泣きじゃくる陽子をなだめていた。
「此処に居るのが翔さんなら、私が会ったのはやはりそうだっのかも知れない」
節子は実家を訪ねて来た翼だと思っていた人物に不信を抱いていた。
翼は何時も自分のことを僕と言っていた。
でもあの日、その人は俺だと言った。
節子が気付くと、本音が出たと言ってはいた。
でも節子は何か違うモノを感じていたのだった。
警察官が到着したのは暫くしてからだった。
「全く今日は忙しい日だ。上町の日高って家で遺体が見つかって」
来る早々愚痴をこぼす警察官。
「えっ!? 今なんて?」
節子が聞き直す。
「だから日高って家で遺体が」
「えっ!? 翼!? 翼の遺体が……」
陽子はフラフラと立ち上がり、坂道を走り始めた。
「誰か! そいつを捕まえろ!!」
警察官の声が響く。
下から上がって来た警察官が陽子の身柄を確保した。
「行かせて! 翼が私を待ってる!」
陽子は激しい抵抗を繰り返していた。
見かねた警察官が、陽子の身柄を拘束した。
節子と貞夫がお膳立てしてくれた東大の合格祝い。
それをアリバイにしようとしたことを。
勝との思い出の品を汚してしまったことを。
勝が買ってくれたアルミシート。
でも翼はこれ以上の素材を知らない。
翼はもがき苦しみ抜いた。
それでも憎しみがそれを上回った。
翼は結局、使ってしまったのだった。
勝だけではない、陽子と秘密基地で暖まった思い出をたっぷり包んでくれたアルミシートを。
翼は陽子を犯罪者にしたくないと願った。
だけど陽子は一緒に罪を償いたかった。
それなのに……。
翼は居ない。
翔から陽子を守り抜いて死んでいった。
だからこそ、殺人者の汚名を敢えて着ようとしたのだった。
「そう言うのは殺人とは言えないわ」
節子は泣きじゃくる陽子をなだめていた。
「此処に居るのが翔さんなら、私が会ったのはやはりそうだっのかも知れない」
節子は実家を訪ねて来た翼だと思っていた人物に不信を抱いていた。
翼は何時も自分のことを僕と言っていた。
でもあの日、その人は俺だと言った。
節子が気付くと、本音が出たと言ってはいた。
でも節子は何か違うモノを感じていたのだった。
警察官が到着したのは暫くしてからだった。
「全く今日は忙しい日だ。上町の日高って家で遺体が見つかって」
来る早々愚痴をこぼす警察官。
「えっ!? 今なんて?」
節子が聞き直す。
「だから日高って家で遺体が」
「えっ!? 翼!? 翼の遺体が……」
陽子はフラフラと立ち上がり、坂道を走り始めた。
「誰か! そいつを捕まえろ!!」
警察官の声が響く。
下から上がって来た警察官が陽子の身柄を確保した。
「行かせて! 翼が私を待ってる!」
陽子は激しい抵抗を繰り返していた。
見かねた警察官が、陽子の身柄を拘束した。