二重人格三重唱
「翔は本当は優しい人でした。だから翼さんの人格を受け入れてしまったのではないでしょうか」
翔の体の中に翼の魂が宿っていた。と言う信じがたい事実を警察から告げられ、摩耶はやっとそれだけ言った。
翼の死因は、サバイバルナイフによるものではなかった。
それは……
驚くべき結果だった。
凍死だったのだ。
出血多量ではあったが、翼は生きたまま冷凍庫に入れられたのだった。
だから、まるで生きているような姿だったのだ。
翼はカフェの奥の奥の冷凍庫で殺されたのだった。
翔は押し入れ収納袋の中にまだ生きている翼を入れて冷凍庫の中に押し込めたのだ。
チャックを閉じられ、僅かに残った空気で呼吸をしながら凍死していった翼。
それでも翼は凍り付いた体のままで必死に母に手を伸ばす。
翼は翔が新婚旅行から戻って来てから埋められたようだ。
翔は翼の心を遺体に戻そうとして……
翼を追い出そうとして此処に埋めたのだった。
まさか、其処に、翼の本当の母が遺棄されてるとも知らずに。
陽子は翼の押し込められていた冷凍庫を見せてもらうことにした。
(翼の心を癒やすためには見ないと何も始まらない)
そう決意したのだ。
寒すぎる冷蔵庫。
更にその奥にある冷凍庫。
陽子は暫くその場に立ち尽くしていた。
(何だろう!? 見たことがある!)
それが何処なのか陽子はすぐに思いあたった。
「ああだからなのね。だからあんなに……」
それは……
コミネモミジのお寺の涅槃像。
あの下にあった四角い無縁仏だと思われたお墓……
「あのお墓と同じ……」
陽子はあの日。
翼の心が泣いていたことを思い出した。
「翼ー!!」
陽子は其処から動けなくなった。
見かねた節子と純子が駆けつけてくるまで、陽子は冷たい床に突っ伏したままで泣いていた。
(翼は知っていたのだろうか? 自分の死に場所を……だからあんなに熱心に祈っていたのだろうか?)
陽子は勝と行ったバレンタインデーのコミネモミジの奇跡を思い出していた。
「翼ー!!」
陽子は泣いた。
思いっ切り泣いた。
お釈迦様の死に姿の涅槃像に、自分の死に場所を重ね合わせた翼の心境を思って。
翔の体の中に翼の魂が宿っていた。と言う信じがたい事実を警察から告げられ、摩耶はやっとそれだけ言った。
翼の死因は、サバイバルナイフによるものではなかった。
それは……
驚くべき結果だった。
凍死だったのだ。
出血多量ではあったが、翼は生きたまま冷凍庫に入れられたのだった。
だから、まるで生きているような姿だったのだ。
翼はカフェの奥の奥の冷凍庫で殺されたのだった。
翔は押し入れ収納袋の中にまだ生きている翼を入れて冷凍庫の中に押し込めたのだ。
チャックを閉じられ、僅かに残った空気で呼吸をしながら凍死していった翼。
それでも翼は凍り付いた体のままで必死に母に手を伸ばす。
翼は翔が新婚旅行から戻って来てから埋められたようだ。
翔は翼の心を遺体に戻そうとして……
翼を追い出そうとして此処に埋めたのだった。
まさか、其処に、翼の本当の母が遺棄されてるとも知らずに。
陽子は翼の押し込められていた冷凍庫を見せてもらうことにした。
(翼の心を癒やすためには見ないと何も始まらない)
そう決意したのだ。
寒すぎる冷蔵庫。
更にその奥にある冷凍庫。
陽子は暫くその場に立ち尽くしていた。
(何だろう!? 見たことがある!)
それが何処なのか陽子はすぐに思いあたった。
「ああだからなのね。だからあんなに……」
それは……
コミネモミジのお寺の涅槃像。
あの下にあった四角い無縁仏だと思われたお墓……
「あのお墓と同じ……」
陽子はあの日。
翼の心が泣いていたことを思い出した。
「翼ー!!」
陽子は其処から動けなくなった。
見かねた節子と純子が駆けつけてくるまで、陽子は冷たい床に突っ伏したままで泣いていた。
(翼は知っていたのだろうか? 自分の死に場所を……だからあんなに熱心に祈っていたのだろうか?)
陽子は勝と行ったバレンタインデーのコミネモミジの奇跡を思い出していた。
「翼ー!!」
陽子は泣いた。
思いっ切り泣いた。
お釈迦様の死に姿の涅槃像に、自分の死に場所を重ね合わせた翼の心境を思って。