シュガーメロディ~冷たいキミへ~
どれくらいそんなことを続けたかな。
言葉は優しくとも、初めの頃はどこかキツイ表情で私を拒んでいた先生が、少しずつだけどだんだん長く私の話を聞いてくれるようになって。
そして、私が中学3年生のとき。
先生がこの高校でピアノを教えることにした、と教えてくれて。
言葉にならないくらい、涙が出るくらい、嬉しかった。
また、のん先生にピアノをみてもらえるんだ、と思ったら、それ以上の幸せなんて思いつかないくらいだった。
だから私は迷わず、苦労して入った私立中学からエスカレーター式の高校に上がることをやめ、この高校に入学したんだ。
────中学生の頃、初めて会ったとき。
水無月くんのことをただの近所の子かな、なんて思っていたけど。
……のん先生の子どもって、水無月くんのことだったんだね。
いつも、ピアノのレッスンの合間に幸せそうに家族の話をするのん先生が大好きだった。
先生自慢の息子さんは、すごくカッコいいんだなぁって、話をきくだけでそう思うくらい、先生が水無月くんを愛しているのが伝わってきてたよ。
「私ね、ピアノが好き。のん先生の昔のピアノも、今のピアノも、……自分のピアノも」
それがどんなにつらい過去を秘めた音でも。
どんなに不器用なピアノでも。
今はまだ、理想には全然届かない、未熟なメロディーしか奏でられなくても。
私にとってはどれも大事なものだから。